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TECH-M Motor Journals No.9

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不思議な縁に導かれた二人の素敵な邂逅

ヤンチャ盛りの小中学生時代を知る、塾の恩師と紡ぐ数奇な縁(えにし)。
十数年前の交流はいまBMWを通じて再び密度を高めつつ連関し始めている。
BMWがある暮らしを享受するオーナーと、ともに生きることを切に望むテックエムの理想像を紹介したい

 

 「ミニやバイク好きが集う行きつけの喫茶店があり、そこに私も彼も偶然知らずして通っていたようで。 ほぼ同時にM4を購入していた経緯が噂となり、私の経営する塾に彼が訪ねてきたんですね。 勉強合宿を終えて塾に帰ってきたら、生徒達が“赤くて厳めしいクルマが塾の駐車場に停まっている”と。 すると“先生、お久しぶりです!”って水元君がにこやかにね(笑)」

そう語るのは、桜井市で進学塾を経営する上江洲さん。 小中学生時代に通っていた塾の先生であり、気さくかつ丁寧な授業内容で今なお絶大なる信頼を生徒から寄せられている紳士だ。 そんな名物先生がクルマ好きであることは近隣住民によく知られた事柄であり、 ましてや日本デビュー後間もないM4を桜井市在住の塾経営者が購入したとも聞けば、テックエムに情報が伝わるのは当然だった。

 

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 「塾の駐車場に真っ赤なM4が停まっているんだから、生徒ならずとも驚きますよね。 で、誰だと思えば、丁寧なお辞儀をするかつての教え子。彼の顔をみた瞬間、あるエピソードがふいに蘇りました。 むかしアルファベットの書き方を教えていたときのことです。 慣れないものだからすこし間違えると生徒はすぐに消しゴムで消して上書きしようとするのですが、 それでは練習にならないので、消しゴムを筆箱のなかに隠しなさい、と指示したわけです。

すると、彼は使わない自信があるから筆箱に隠さず机の上に出しておきたい、と。 結果はもちろんつい使ってしまうわけで、その度に“ほら、いま水元使ったやろ!!”とツッコむといつもイタズラっこっぽい表情を浮かべながらはにかんでね。 十数年前の事柄にも関わらず記憶が鮮明だったのは、思えばそれだけ印象深い生徒だったんでしょう」

 

 その後、テックエムを訪問した上江洲先生だが、接客応対や各種整備風景を眺めるにつれ、 テックエムが誠実かつ精力的に仕事をこなしていることを確認。 教え子の真摯な姿勢に満足しつつ、じつは心のなかではある葛藤が生まれていたという。 どうせならばBMWに精通する教え子の実力を十二分に味わってみたい、同好の士として共感を深めてみたい――。

 

 だが、現代の自動車テクノロジーの粋を集めた最新鋭の個体はあまりにも完成度が高すぎ、 テックエムといえども介在できる余地は少ないと考えるに至ったとか。 実際、チンスポイラーの装着と内装各部の本革張り替え程度しか、先生はテックエムにオーダーしておらず、 メーカーやディーラー補償が効く期間内は正規店にて各種メンテナンスを受けている。

転機を迎えたのは、年に数回大雪が降る桜井市に住まう先生ご家族の長らくの願望、 雪の坂道でも力強く登っていける四輪駆動車を迎えたいとの意向が強まったことからだった。 もちろんスノータイヤへ交換すれば問題は解消するのだろうが、その作業を億劫に感じるのは世の常人の常、 ましてや目の前に長らく羨望し続けてきた名機がご褒美よろしく用意されてしまえば、複数台所有を決意せざるを得なかった。

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 「わたしが住む町はごくたまに大雪が降り、その際、坂が登れなくなることがあります。 そうなると、やはりヨンクが欲しくなる。そんなとき、とある場所で憧れだったアルピナの4WDを思いがけず発見してしまって。 すぐ彼に連絡を取って彼自身にコンディションを見定めてもらい、 個体としての状況がまずまずならば交渉して引っ張ってきてもらえないかとお願いしました。

 

すると“8万kmを超えたややくたびれた個体ながら、 フットワークをはじめや内装などのヤレなどをリフレッシュ&レストアすれば必ず蘇るはず”と背中を押してくれたわけです。 教え子に憧れの一台を目利きしてもらい、教え子に憧れの一台をトータルでとことん整備してもらう。 安く購入できたからこそ、彼一流の仕事を十二分に堪能することもできた。正直、これほどの愉悦はありません」

 

 一ヶ月半にわたるリフレッシュ作業を経て、 2015年7月に晴れて上江洲先生のもとへ納車されたアルピナB3 3.3オールラッド。 見違えるほど美しくなった内外装と機関に思わず頬は緩み、ひいてはテックエムの技量に感じ入ったという。 もちろん、機械はあくまで機械でしかないが、汎神論的にいえば慈しみつつ手を加えられた機械にはやはり魂が宿るのか、 どこか神々し印象さえ抱かせるもの。本物だけがもつオーラとは、確かに存在している。

 

 

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 「四輪駆動車は曲がりにくい、というイメージを植え付けられた世代ですから、 納車後の帰り道はそれこそ慎重でした。が、距離を稼ぐにつれてそんな固定観念がどんどん薄れていきました。 コーナーもストレートも意外なほどスムーズに旋回する、蹴り上げる。 初めて四輪駆動車を運転したこともあり、それがアルピナだからなのか4WDだからなのかまでは分かりませんでしたが。 M4、M5、アルピナB5など気になったBMWはすべて試乗してきましたが、 それら最新型に勝るとも劣らない足廻りをしている。旧くてもアルピナはアルピナなんだな、素晴らしいなと」

愉悦の表情を浮かべながら語る先生だが、聞けば最新のBMWはデジタル感が強くあまり好みではないとか。 何故ならダイレクト感が希薄過ぎるからだという。 操舵時における軽すぎるハンドル、アクセル開閉時のレスポンスやフィーリング。 現代社会に必要な快適性がすべて備わっているものの、どこか余所余所しい印象が拭えないようなのだ。 その点、アルピナB3はアナログながらデジタル制御に勝る乗り味、いわば人馬一体感覚が楽しめるという。

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 「納車後、じつは9:1くらいの比率でアルピナB3を溺愛中。 せめてバッテリーをあげないように4のつく日はM4に乗るよう心掛けています(笑)。 話は変わりますが、多分にE46型3シリーズは最新モデルに比べてコストが掛かっているように思えますね。 コンピュータによる解析・制御がまだまだ不十分だったからこそ、 あらゆる問題提起を想定してオーバークオリティに仕上げられているのだと感じます。 すこしずつ積み重ね上げられたプラスαの余剰能力が、 十数年を経たいま現在でも十二分に通用する実力へと繋がったはず。 もちろん、その能力が遺憾なく発揮できるのは、リフレッシュという名のファインチューニングを施してくれた彼の流儀ありきです」

 

 上江洲先生が蒔いた種はテックエムというBMWシーンに必要不可欠な存在を放つ大樹へと育ち、 逞しい根を堺の地に下ろした。そして、年月を経てその果実を勧進元である花咲か爺が食す。 BMWを通じて深く繋がる仲間内ですべてのモノ・コトを共有する、じつはそんな回生・連関関係こそがテックエムの理想像。
それぞれの得意をこぞって持ち寄り、BMWがある暮らしをよりいっそう豊かなものへと一緒に昇華させていきたい。
テックエムはすべてのBMW好きの触媒であり続けたい。

 

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